2006年12月14日

甲山 こうやま

■姫路市飾磨区妻鹿■

市川に山影を写す甲山  城跡の碑

 山陽電鉄妻鹿駅を降りて市川の土手を北へ向かうと、川面に点々と真綿が浮いているように見えたのは白い鳥の群れで、渡り鳥がやって来るこの季節ここはバードウオッチングの名所となって大いに賑わう。
 右手に標高九十八メートルの甲山が県道妻鹿・花田線に西麓を削られながらも凛とした姿で眼前に迫ってきた。それもそのはず『太平記』に名前を記された妻鹿孫三郎長宗が鎌倉時代に山城を築いていたといい、のちに天正のころ黒田如水こと孝高が父職隆と居城したと伝えられる。勇猛果敢に戦った武士達にちなんだ功山(こうやま)との記述もあり、功の字を(いさおし)と読んで「いさおし山」と記載する書物もあるようだ。また播磨国国分寺へ近距離のためか国府山(こうやま)などの読みも加わり、かつてのつわものどもの夢の栄華を偲ばせる多様な山名の読み替えが多いのがこの山の特徴でもあろうか。しかし武功の話題に事欠かない山にもかかわらず、甲山を「かぶと山」と呼ばない訳はあくまでも「こう」にこだわる理由があるに違いない。日本地名研究所所長の谷川健一さんは「こう」という地名の意味について「コフは鳥の鳴き声を表しているもので、コフと鳴く白い鳥は時期が来ると岸辺にやって来て、近くの森で雛を育て、やがて春が来ると北へと飛び帰って行く」と述べ、白い鳥の鳴き声が地名の起こりとの考えを披露する。
 渡り鳥は飛び立つまでの日々おびただしい糞を、森はおろか近辺の田畑や水辺に落とし、田畑は養分を貯め込み春先に豊な収穫をもたらす、そんな自然の恵みのサイクルに早くから気がついた人たちは、愛らしい鳴き声の白い鳥を意識して待ち侘び、巣を架ける山をコフと鳴く鳥にちなんで甲山と名付けたのではなかろうか。
 山腹に古代の遺跡が確認されたという山際の清流がこれからも保たれるかぎり、白い鳥たちの飛来もつづくに違いない。
posted by 早春 at 22:09| Comment(0) | 姫路市東部 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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